≪まかいちょって家・・・馬路村の製品を販売する直営ショップ≫
1. 視察先
8月6日 馬路村農業協同組合(ゆず加工所)
8月6日 エコアス馬路村
8月7日 土佐和紙工芸村「くらうど」(薪ボイラー『ガシファイヤー』)
8月7日 土佐の森救援隊・木の駅 日高
≪インクライン・・・水力で動くケーブルカーです≫
2. 視察内容
《 馬路村農業協同組合 》
馬路村農業協同組合の設立は昭和23年(終戦から3年後)である。昭和35年には人口3,425人と最大であったが平成24年1月31日時点で998人となっている。昭和38年、10人ほどの農家でゆず栽培がスタートし、その後に村ではゆず栽培が盛んとなるが他地域でもゆず栽培が行われゆずの価格が下落した。そこで青果としては価値の低い規格外のゆずを利用し、昭和45年にゆず酢を発売する。昭和50年にはゆず集荷場が完成する。昭和54年には加工品作りを開始する。昭和55年に売り上げが約3,000万円、昭和63年には西武百貨店101村展でポン酢しょうゆ『ゆずの村』が最優秀賞を受賞し、売り上げは一億円を突破。平成2年には同展で『ごっくん馬路村』が農産部門賞を受賞し、一躍人気商品となる。平成5年にはゆず加工場(ごっくん工場)が完成。売り上げは10億円を突破。平成12年にはホームページをつくりインターネット通販を開始。平成18年にはゆずの森新加工場が完成し、売り上げが33億円となる。平成22年に化粧品工場が完成し平成23年には「Umajiオリジナル化粧品」を発売。
平成23年度の営農販売事業販売額は30億7,500万円、信用事業期末貯金残高71億8,200万円、貸出金期末残高2億400万円、共済事業長期共済の新契約保障額6億2,000万円、年金共済の新契約年金原資額3,200万円、購買事業供給額1億6,000万円。
同農協で働いている人は94名で、うちゆず加工品に関わっているのは77名。出資配当は年7%。ゆず畑は46ha、一農家平均24a。買取価格は(180円+事業分配配当60円)/kg(平成23年度)。190戸がゆずを栽培。
今後の課題としては栽培されたゆずを全量買い取りしているので果汁が余るとのことであった。
馬路村では馬路村役場・農協・森林組合が協力して事業を展開し活力ある村づくりを行っている。人口は998人(平成24年1月31日時点)。高齢化率36.9%。行政面積の96%が森林、2%が河川、1.3%が道路、0.7%が宅地農地となっている。年間観光客は6万人。I・Uターンの若者の推移は転入年平均16名、転出年平均5名。
《 エコアス馬路村 》
従業員数は総務企画5名、事業8名、加工6名、工芸2名、森の情報館(高知市)3名の計24名で、この他に非常勤の役員(当て職)がいる(村長が社長)。平均年齢は約45歳。資本金は4億2千万円で90株主があり、馬路村が95%の3億9,800万円を出資している第3セクターである。
主な業務は、瓶の取り扱い(仕入れ・倉庫業)6,000万円、山の施業7~8,000万円(大半は国有林・村有林、一般競争入札)、商品販売4~5,000万円で年間売上約2億円。村からの赤字補てんは行われていないが、固定資産税相当額を補助上限として補助金交付がある(平成23年度2,800万円)。
森林組合と施業が競合するが、森林組合は山の班による請負い(歩合)となっており、個人主義的な側面が強く、人材育成の側面が希薄である。そこで人材育成と若者の参入を促すためにエコアス馬路村設立された経緯がある。
《 薪ボイラー・ガシファイヤー 》
土佐和紙工芸村「くらうど」は平成7年に農業振興公社として建設され指定管理施設に変更され現在に至る。指定管理料の支払いは行われていない。施設の概要としては滞在型農園施設(ホテル)、薬湯風呂施設、地域食材供給施設(レストラン)管理棟、伝統家屋移設施設(田植邸)、和紙体験実習館、農林漁業体験実習館(農産加工実習館)、産地形成促進施設(農産物直販所)、農林漁業体験実習館(炭焼き体験実習館)、ふれあい農園、伝統家屋移築施設(紙漉き民家)、伝統家屋移築施設(蔵)からなっている。当該施設のあるいの町は製紙が基幹産業となっている。
薪ボイラーの設置工事に際して設置工事費にボイラー購入費を含めずに町がボイラーを購入している。事業費3,545万6千円、ボイラー室32.75㎡、燃料貯蔵庫16.98㎡、薪ボイラー3基。事業費の内訳は設置費約2,300万円、薪ボイラー約1,200万円(一基430万円)。
薪の購入は薪割り前の木材を仁淀流域素材生産業協同組合から購入し、薪の作成・ボイラー管理は指定管理者の西川建設株式会社が行っている。
『ガシファイヤー』の特徴として、一次燃焼室と二次燃焼室で燃焼を行うので灰が少なく煙も少ないようである。また含水率の比較的高い木材でも利用が可能であり、ボイラーに入るサイズなら投入可能。
木質バイオマスボイラーの検討に際しペレットボイラーによる実証実験を実施したが、安定燃焼・連続燃焼に対して大きな障害要因を有している事から導入を見送った経緯がある(灰が出る、灰が固まる)。
導入実績であるが、導入前の平成23年度と平成24年度を比して128万円の費用削減効果があった(668万円から540万円《木材84万・人件費236万円・資材償却14万円・メンテ等50万円を含んで》)。灯油使用料は77.36%の減少となった。灯油ボイラーはバックアップ用として利用されている。
木材は主に杉が多いとのことであった。薪の値段は6,300円/㎥(因みに近隣にある大王製紙の受け入れ価格は4,200円/トン)、含水率は夏場で60%ぐらい。径15cm以上、長さ1m~1.1mの木材を含水率の低い冬場に大量仕入れを行い、2か月間貯木場で乾燥させている。
課題としては、ボイラー建屋の室内温度が夏季には非常に高くなるので室内温度を下げる工夫が必要であるとのことであった。
《 土佐の森救援隊・木の駅 日高 》
地域通貨券システムについて、地場産品との交換券の位置づけであり、地域経済の循環という観点から全国的に注目されており、いの町・高知市など35店舗で使用可能。換金性はなく、お釣りもない。精算業務は「こうち自然村」が行っている。出荷した林業家には別途ガソリン券(通称青モリ券)を2トン当たり1枚(10ℓ)を上乗せ支給。
公的補助等は約400万円を受け入れている。
入荷の大半を占めるC材は高知市のチップ会社に売却、年間700トンを入荷(平成24年度)している。
木の買取りについて、買取価格は重量制でトン当たり3,000円、上乗せは燃料券で行っており、上限を設定している。
薪の製造については、夏季を除く毎週金曜日に15人位のボランティアが集まり、3トン/回程度を製造。広葉樹は2か月ほどを乾燥させて販売し、含水率は10%未満。年100トンを製造。
薪の販売について、広葉樹30円/kgで販売し、配達は1,000円/回。針葉樹は中山間地域の高齢者宅の風呂焚き用として無料に近い形で配達。年50トンを販売している。
また木材搬出時の事故で大きなものは起こっていないが、これまでにチェーンソー事故が4、5件起こっている。保険としてはグリーンボランティア保険を前日に登録しているとのことであった。
3. 私感
《 馬路村 》
馬路村の凄いところは将来を見据えて逆境に耐え抜いた所である。そして村役場と農協と森林組合が協力をして村の将来のために事業を行っていることが今の成功の土台となっている。馬路村農業協同組合はゆず加工を一大産業に押し上げた、その功績は馬路村のこれからの将来を担っていくだろう。またエコアス馬路村はこれからの森林行政を変える可能性を秘めている。ともに事業リスクを抱えながらも新たな取り組みに果敢に挑戦をする姿勢やネバーギブアップの精神やポジティブな思考は朝来市も見習うべきである。
《 ガシファイヤー 》
費用対効果の側面や環境に配慮した燃料利用の面から有効な薪ボイラーである。
《 木の駅 日高 》
土佐の森救援隊は多くのボランティアにより支えられており、朝来市も同様の仕組みを作るにはボランティアの参加を促進する仕組みが必要である。
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会派視察(馬路村農協・ゆず加工所、エコアス馬路村、薪ボイラー・ガシファイヤー、土佐の森救援隊)
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