平成26年7月22日
能見 勇八郎 議長
産業建設常任委員会委員 吉田俊平 ㊞
平成26年7月14日、15日に産業建設常任委員会で島根県大田市と同県出雲市に管外視察を行いましたのでご報告いたします。
1. 視察目的
イ) 大田市役所 ・・・・ 大田市の観光政策について
ロ) 大田市観光協会 ・・ バス予約システムについて
ハ) 出雲市役所 ・・・・ NPO法人21世紀出雲産業支援センターについて
2. 両市の概要
イ) 大田市
大田市は島根県の東西中央部に位置し、面積は436.12㎡。人口は37,568人(h26.4.1)である。平成26年度一般会計当初予算額の規模は240億円余りとなっている。市内には世界遺産に登録された石見銀山遺跡をはじめ、温泉津温泉や国立公園三瓶山を擁し、年間140万人以上の観光入込客数がある。
変わった課や係として、定住推進室・人事課・子育て支援課・医療政策課がある。
イ) 出雲市
出雲市は島根県の東部に位置し、面積は624.13㎡。人口は174,505人(h26.3.31)である。平成26年度一般会計当初予算額の規模は730億円となっている。市内には出雲大社をはじめ、宍道湖や島根ワイナリーなどがあり、年間1,000万人以上の観光入込客数がある。
変わった課や係として、縁結び定住課・出雲ブランド室・子育て支援課・21世紀出雲産業支援センターがある。
※平成25年度観光動態 大田市1,556,339人 出雲市15,758,052人
式年遷宮 ・・・ 平成20年仮殿遷座祭、平成25年本殿遷座祭
3. 視察内容
イ) 大田市の観光政策について
平成19年4月に観光客の受入体制の整備としてパークアンドライドを開始し、同年7月に石見銀山遺跡が世界遺産に登録をされた。観光客数の推移は、平成18年400,000人、平成19年713,700人、平成20年813,200人をピークに平成25年には511,600人となっている。
パークアンドライド方式による観光は世界遺産遺跡内に新たな駐車場を設けることができないために実施された。しかし世界遺産登録に伴い急増する観光客による交通渋滞等の解消のため、平成20年10月にはそれまで遺跡内を走っていた龍源寺間歩行き路線バスを廃止し、遺跡内をゆっくり巡るスタイル「歩く観光」への転換を図り、パークアンドライドの見直しを行っている。
遺跡内の住民(車)と観光客(車)の区別は、住民・事業者・関係者等にステッカーを渡して分かるようにしているとのことであった。
また遺跡内の二箇所の乗降場を一つのバス予約システムで管理しているとのことであった。
予約バスシステム管理料は、交通渋滞回避と近隣住民の生活環境の保全や観光客の安全確保を目的に、乗降場で人員を配置し交通整理に努めている人件費等に充当してされており、ひろい意味で遺跡と住民の生活環境の保全への協力金という性質のものであり、乗降場の利用のみでも管理料が必要となりますとのことであった。
インバウンド対策について、世界遺産センターや公開施設内のパンフレットは英語版を用意し、HPは英語・中国語(普通語・台湾語)・ハングルを準備しているとのことであった。
平成18年度から平成20年度にかけて実施された拠点施設整備事業の総額は1,133,578,000円であり、文化庁の国庫補助が318,776,000円、過疎債が776,500,000円、一派財源が38,302,000円となっているが、大田市が負担する過疎債と一般財源を県が負担しているので市の負担はないとのことであった。また、間歩の国庫補助事業は安全対策として実施し、今後10年間で調査・整備を行う予定とのことであった。
「おおた観光プロジェクト」は事業廃止されていた。
「石見銀山行動計画」は平成18年3月に、守る(保存管理)、究める(調査研究)、伝える(情報発信)、招く(来訪者の受入)、活かす(活用)、を計画の柱として策定された。また平成20年3月には「石見銀山基金」が設置されている。
平成18年には、プライバシーの侵害や盗難など生活環境が悪化、観光影響の予防のため、住民の願いを観光客に発信し遺跡内で暮らす人々の思いを伝える「大森町住民憲章」が制定されている。
ロ) バス予約システムについて
世界遺産「石見銀山」のバス予約システムは大田市観光協会が運営している。石見銀山のガイダンス棟である石見銀山世界遺産センターを含む付近に普通車400台、大型バス13台の駐車場を確保し、観光バス乗降場は遺跡内に2か所あり、観光バスの乗客をそこで乗降させる。観光バスは予約バスシステムを利用して入場時間と出発時間、乗降場所を事前に予約する。予約の申し込み方法はネット・FAXとなっており、事前予約のないバスについては、乗降場である銀山公園と大森代官所前に各一人のおたすけ会(ボランティアの地元住民)を配置し、当日の現場対応で受け付けている。利用料金はネット1,500円(振込手数料別)、FAX1,700円(振込手数料別)、予約済(事前振込無・当日現地払)3,000円、予約無(当日払)3,000円となっている。当該システムのコストについて、イニシャルコストは約200万円、ランニングコストは約20万円であるが、システム管理委託料はシステム利用料で賄われている。システムの開発は地元の会社が開発されたとのことであった。
自家用自動車の観光客は石見銀山世界遺産センターに駐車し、石見銀山公園まで地元唯一のバス会社が運行する路線バスで移動する。往復400円。
観光バス台数が平成19年度6,700台、平成20年度6,800台、平成21年度3,650台、平成24年度は1,850台とピークの72.8%減となっている。平成19年4月にパークアンドライド、同年7月に世界遺産登録、平成20年10月にパークアンドライドの見直しが行われ遺跡内の路線バスが廃止されているが、バス予約システム導入が観光バスの大幅な減少を招いたというよりも、むしろブームの終焉との認識であった。
また予約システムの導入に際しては多くのクレームや問い合わせ等が観光バス会社等から寄せられたとのことであった。
同観光協会の収入源は大田市からの委託事業収入とシステム管理料、貸出を行っている音声ガイド(イヤホンタイプ、バックマージンあり)、自転車貸出料、土産物の売上ということであった。以前は職員人件費の全額補助や指定管理料があったようだが、現在は自主財源の確保を目指しているとのことであった。また観光協会費は正会員1,000円10口(約200名)と賛助会員1,000円2口(約50名)となっている。
警備費については大田市の負担とされている。
ハ) NPO法人21世紀出雲産業支援センターについて
NPO法人21世紀出雲産業支援センターは、平成16年9月1日設立のNPO法人出雲産業文化支援センターに端を発し、平成19年4月2日に出雲産学官交流フォーラムと財団法人出雲平田地域産業振興センターを統合し変更登記がなされ、産業に特化した組織へと変革している。
組織の概要は正会員140名で、事務局長は出雲市からの出向職員で、計7名(内プロパー4名)となっている。
市とセンターの関係は委託受託の関係であり、センター収入の90%を超える額が負担金・受託事業費となっている(平成25年度決算収入45,900,000円、負担金7,000,000円、受託事業費34,800,000円、収入対比91.07%)。
市は行政が行いたいことをフォロー(実現)するために産業支援センターに事業を委託しているので、他の商工団体(市内商工会議所2団体、市内商工会2団体)とは設置目的が違うとの認識をもっているとのことであった。
唯一の目標値である企業訪問は年間1,000件(平成25年度777件)を目標とし、会員企業(会費5,000円)と非会員企業を訪問している。
企業活動支援・誘致促進に関する事業として、マッチング支援事業を実施し、マッチング件数59件、うち成功案件25件となっている。
従前は申請が少なかったので補助事業もスタートアップ支援事業として、新たに補助額が小さく(10~20万円)補助率が良い(10/10)、事業展開拡大補助事業として実施しているとのことであった。
販路拡大に関する事業として、食品製造業スキルアップ事業として、FCP展示会・商談会シートを活用した研修を行っている。
その他産業の振興に関する事業として、産業支援組織との連携強化を図っているとのことであった。具体的には信用保証協会や金融機関と産業力強化法の創業支援事業計画策定に向けての連携を強化しているとのことであった。ただこの創業支援事業計画の策定は商工団体と競合している唯一の部分とのことであった。また資料に因ると、簿記検定も競合しているものと思われる。
支援センターの人事制度については、採用時に一般教養試験を課し、採用後は人事評価や業績評価も行っているとのことであった。
4. 私感
今の大田市(石見銀山)の観光政策については、世界遺産登録を県が目指した平成7年から始まり、石見銀山景観保全条例の施行と史跡石見銀山遺跡保存管理計画の策定をした平成17年からは順次環境整備に着手し、平成19年には世界遺産登録前にパークアンドライドが実施され、同年世界遺産に登録がなされ、そしてあくる年には石見銀山遺跡内の交通対策の見直しがなされた経過・経緯を考えるに、目標と結果と対策がうまく機能している。また住民の地道な活動によって生まれた「石見銀山行動計画」や「大森町住民憲章」からは住民の大切にすべき考え方や価値観がまざまざと顕れている。そして石見銀山の観光を語る上で、パークアンドライドとバス予約システムがなくてはならないものであることは言うまでもない。朝来市として今年度導入されるバス予約システムを有効に機能させるためには、目標の設定、結果の分析、有効な対策をシステムの導入前にどう構築していくのかが非常に重要であると考える。また住民との協働をどう図っていくのか、住民の生活に密着した環境を守るための協働を住民とどう構築していくのかも非常に重要な課題であると感じる。最後に、同システムのイニシャルコストとランニングコストが非常に安いことは、朝来市として住民に説明しにくい事実ではないかと考える。今後のシステム導入の前に新たな運用方法やシステムの見直しが必要であることを私見ではあるが強く述べる。
NPO法人21世紀出雲産業支援センターについてであるが、出雲市のように行政がしたいことを委託事業として同センターで実施することが果たして朝来市に出来るのか、人的物的に可能なのか、甚だ心許無い気がする。その上で、どういった組織を目指し、どういった目標を設定するのか、事業実施までに再検討が必要ではないだろうか。第一感的には、ある特定の分野(目的)に特化するまたはニッチを目指す、そういった他にはない朝来市だけの選択が必要なのではないかと考える。
以上
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平成26年度産業建設常任委員会管外視察報告
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