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Channel: 吉田しゅんぺいの議員日記
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産業建設常任委員会管外視察報告書

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波多野産業建設常任委員会委員長 殿

平成29年1月30日
産業建設常任委員会管外視察報告書

1. 視察先
平成29年1月26日(木)
和歌山県橋本市役所
「企業誘致について」
平成29年1月27日(金)
和歌山県田辺市熊野ツーリズムビューロー
「観光DMOについて」

2. 視察先概況
イ) 和歌山県橋本市
 橋本市は、和歌山県の北東端、紀伊半島のほぼ中央に位置している。人口は64,396人(平成28年12月31日現在)。行政面積は130.24㎢。議員定数は20名。
ロ) 和歌山県田辺市
 田辺市は、和歌山県の南部、紀伊半島の南西側に位置している。人口は76,509人(平成28年12月31日現在)。行政面積は1,026.91㎢。議員定数は22名。

3. 視察内容
イ) 企業誘致について
 橋本市の企業誘致の特徴はトップセールスにある。平成17年に合併し、前市長が自ら橋本市のPR資料等を作成し、周辺の工業団地に飛び込みで営業をされた事もあり、平成17年以降に33事業所の立地と794名の雇用を創出している。
 そもそも橋本市は大阪中心部からのアクセスの良さから住宅団地・衛星都市(ベッドタウン)として発展してきた。しかしその後に土地の販売不振などによって住宅用地は獣の巣と化していたが、開発事業者である南海電鉄からの土地の無償譲渡を市が受け、企業誘致に舵を切る事となった。
 また橋本市の存する和歌山県も、「和歌山には、観光と企業誘致しかない」との方向性を打ち出しており、橋本市の企業誘致に大いに寄与している。
特筆すべきは、前市長就任時には企業訪問数が27件であったが、平成23年度には431件と20倍の伸びを示している。この事は如何に前市長が企業誘致に力を入れていたのかが分かるデータである。平成27年度には194件と減少しているが、それは販売すべき土地が無くなった事に起因する。
 橋本市の企業誘致のターゲットは、都市での企業誘致のミスマッチの逆活用と身の丈に合った誘致であり、企業誘致の方針が近隣市町との競争に勝つ事として目的を単純化して取り組まれている。そこには共存共栄の考えなどなく、弱肉競争の原理しかない。
橋本市の企業誘致が成功した要因であるが、①トップセールス、②立地(アクセス)、③安価、との事であった。
 企業誘致は、後の記録のために二人で回っているとの事であった。
 工業団地土地の販売価格は「固定資産評価額÷0.7」(17,000円/㎡)として分譲されている。
 また橋本市が整備した紀ノ光台Sゾーンの収支は、造成費用8億9100万円で、収入合計は10億2500万円で、1億3400万円の黒字となっているが、この大きな要因は土地取得費用が必要なかった事が大きいものと推測される。
 進出協定は、セレモニー的、アピールの要素が強いとの事であった。
 企業誘致奨励金制度は、橋本市が実施する「企業立地促進奨励金」、和歌山県が実施する工場に対する「雇用奨励金、立地奨励金、本社機能移転奨励金」、オフィス施設・試験研究施設に対する「雇用奨励金、立地奨励金」、ハローワークが実施する「地域雇用開発奨励金」がある。また、企業立地促進法による税優遇や日本政策金融公庫の地域活性化・雇用促進資金融資制度、半島振興法による税優遇や和歌山県の融資制度などがあり、企業誘致にかかる情報(地図やアクセス、団地概要や様々な申請先、法律など)を分かり易くまとめた企業立地ガイドに掲載がされている。
 橋本市の方針は「奨励金制度で過当競争をする気はない。」と明言されていた。
ロ) 観光DMOについて
 まず総論として、熊野ツーリズムビューローは、平成17年の合併に端を発する。合併に伴って旧市町村毎の観光協会をまとめる連絡協議会が設立され、翌年には旧市町村毎の観光協会を残しながら、田辺市熊野ツーリズムビューローが設立された。
 外部の第三セクター方式とした理由は、熊野古道が極めて宗教性の高い観光地である事と、行政が目指す公平性の否定をするために、現在の形となった。
 観光協会との関係性であるが、ビューローの理事会にそれぞれの観光協会の会長・副会長が入っており、またインバウンドはビューローが行い、国内客は観光協会という住み分けがなされている。
 市とビューローとの住み分けは、市が観光政策や観光施策、施設整備を行い、ビューローはフロント業務を行っている。
 ビューロー内部の組織は、旅行事業部とプロモーション事業部から成る。
 ビューローの業務範囲であるが、田辺市内の業務(集客や着地型旅行商品の開発・コーディネートと販売など)が主であり、国外や空港から田辺市までの旅行商品の取扱いは行っていない。
 一般社団法人を選んだ理由だが、法人格が必要だった事と非営利を目指されていたために一般社団法人となったとの事であった。
 成功の要因は、優位な人材との出会いであり、ターゲットの絞り込みに成功したからである。
 ビューローは小さな宿の架け橋を目指し、「一過性より持続性」、「ブームよりルーツ」、「マスより個人」、「インバウンドの推進」を基本スタンスに着地型観光とプロモーションに取り組まれている。インバウンドは英語圏の欧米客がターゲットである。その理由は、アジア圏には宗教性や自然などへの集客力がないからであるとの分析に基づいている。
市から第三セクターへの支出は、委託事業及び補助金(3年間を上限に年に約3,000万円)である。
 各論として、パンフレットやサインディスプレーについて、外国人にとっての漢字は私たちがイスラム語を見た時に感じるイメージである。つまりは全くチンプンカンプン。そこで英語表記を併記する事になった。パンフレット、ウェブサイトを多言語化した。またローマ字表記も統一された。
 情報発信として、プレスやエージェントに向けてのツアーを企画し、「ロンリープラネット」や「ラフガイド」といったガイド本に記事やコラムを掲載された。またミシュラン・グリーンガイドの三つ星を契機に、HPや海外向けのパンフレットを改定された。
 また観光客の受入れ環境の整備(現地のレベルアップ)として、セミナー(ワークショップ)や現地研修を延べ60回以上行い、困り事や課題を抽出し、解決策を提示する事で、宿泊関係者や交通事業者、熊野本宮大社などの理解を得る努力をビューローはされてきている。
そこで、会話で最も印象に残った事や理解する上でのポイントとして、ボディランゲージが重視し、周辺マップやホテル案内などの指さしツールを作成された。
 また、飲食店のメニューなどもビューローで無料作成されている。またバスの時刻表も英語化し、サイン(看板)も再整備された。
 また、歴史の説明文などは、その時の社会情勢や文化などを丁寧に説明し、知識のない外国人でも理解できるように配慮がなされている。
 予約の方法も店舗からインターネットに変更し、旅行者にとっては、①安価になる、②自由な旅行が出来るとして、そのメリットは大きい。
 観光客にとって、①言葉の壁、②決済の壁、③ツアーの壁が存在している。その障害を取り除くために、予約システムを開発され、着地型観光旅行商品が造成されている。ビューローがインバウンドの旅行(旅行者)を整理し、旅行者と地元や地域を結び付けている。担当者は携帯を持ち24時間のバックアップをされている。
 ビューローの収支は、売上2億8600万円、仕入1億9900万円(宿への支払)、粗利8700万円、販売一般管理費8100万円で、600万円の黒字となっている。宿からのマージンは10%程度との事であった。
 太鼓や習字などの着地型ツアーを造成し、語り部ジュニアは教育の一環として、自分たちの文化や歴史などを学んでいる。
 インバウンドの救急・緊急対応は、消防本部が民間事業者を介した通訳3者通話で5か国語24時間対応をおこなっている。
 基金は、市・銀行・商工会議所・観光協会・個人などで合計1000万円。
 語り部ガイドの会は、11団体があり、各エリア毎にあるとの事であった。
 特区ガイドについては、高野山と熊野古道において国の基準より緩やかな有料外国語ガイド特区の認定を受けている。
 今後の田辺市の目標は、「まちじゅう観光!」をテーマに、これまでの狭義の観光にとどまらない、地域全体に広がる観光を目指されている。それは、観光を通じて、地域全体が利益や価値を共有する事である。そのために必要な事は、「活用と保全・保存のバランス」、「ターゲットの絞り込み」、「プロモーションと受入地の整備」、「広域的・他業種との連携(お客様目線)」、「地元(住民)が地域に誇りを持つ事」であり、世界にはこの地域や文化に興味を持つ変わった旅行者が必ずいると確信しているとの事であった。またその旅行者を必ず満足させて帰すと言われていた。
 最後に、観光DMOの成り立ち得る要素とは、との質問に、「端的には稼ぐ力であるが、国を挙げて観光立国を目指す過渡期にあり、今後の将来は分からない。」と話されていたがそこにはこれまで実績と緻密な分析に基づく今後への自信があるようにも感じた。

4. 私感
イ) 和歌山県橋本市
 朝来市と橋本市を比較して、企業誘致に対する取組みの熱意が全く違うと感じた。橋本市は市長自らが率先して飛び込みの営業をしている能動的な企業誘致である一方、朝来市は従来通りの受動的な企業誘致である。立地やアクセスは大きく違えども、熱意や行動では負けない気迫や実行が必要である。逆に言えば都市部や都市近郊の自治体と企業誘致の点で大きく劣る朝来市には熱意と行動しかない。それさえも負けていては結果が覚束ない事は火を見るより明らかである。単純に朝来市の実績は増えた企業数や奨励金を利用した企業数である一方、橋本市は自らが訪問し営業し企業誘致が出来た企業数である点が、自らの活動成果以外でも実績として挙げている自治体と、本質的に地域への貢献を重視して実績報告をしている自治体との大きな違いである。上辺や見せかけの行政を住民は求めていない事を強く報告したい。また過程より結果を重視する行政や企業誘致を目指すべきである事を付言する。
 また朝来市も近隣からの企業誘致を積極的に進めるべきである。
ロ) 和歌山県田辺市
 今後に朝来市が出来る事は、酒蔵を二つも有する山東地域でガイドを養成する事が必要であると考える。また朝来市でインバウンドの着地型観光旅行を実現させるためには、田辺市と同様に外国語への対応を図ると共に、着地型観光旅行商品の開発や販売が必要となってくるが、その実現は容易ではない事から、一般社団法人豊岡観光イノベーションとのタイアップや竹田城跡・生野銀山・山東酒蔵の一般社団法人豊岡観光イノベーションの商品化への営業活動によって、商品開発・商品販売を目指す事が現実的であると考える。
 また、田辺市の成功事例を朝来市にただ単に当てはめて考えるだけでは、必ず失敗を招く事から、今回の視察で、真似が出来る事と真似が出来ない事、そして参考にすべき事と参考にすべきでない事を、ニュートラルに検討する必要がある。その上で、田辺市と同様に、同一市内に観光協会とDMOが競合したり併存したりする事は不可能であると考える。また新たな組織の設立は観光資源が乏しく、観光産業の確立が出来ていない現時点において、不必要な混乱と組織の弱体化を招きかねない事から、観光協会の統一による整理と強化、そしてインバウンド機能の拡張を行うべきであると考える。
 

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