平成29年1月23日~24日に管外視察を行いましたので、下記に報告します。
1.視察日時・視察先
①平成29年1月23日(月)午前10時00分~午前12時00分頃
西粟倉村役場
「100年の森林構想について」
②平成29年1月24日(火)午前9時00分~午前11時00分頃
邑南町役場
「日本一の子育て村構想について」
「A級グルメについて」
2.各市の概要
《岡山県西粟倉村》
西粟倉村は岡山県の北東部に位置し、人口1,495人、行政面積57.97㎡、高齢化率35%の小さな村です。議員定数8名。
《島根県邑南町》
邑南町は島根県の中南部に位置し、人口11,208人、行政面積419.2㎡、高齢化率43.4%の広大な町です。議員定数15名。
3.視察内容
《西粟倉村》
西粟倉村は村の資源は森林しかないとの結論から、森林を活かしたまちづくりを行っている。そのための構想が「百年の森林構想」であり、「百年の森林事業」である。
百年の森林創造事業は、森林の管理・整備、間伐材の販売で、森の学校事業は、間伐材を使った商品の開発・販売、西粟倉村ファンの創出を行っている。
百年の森林事業の全体概要は、西粟倉村役場が特別会計で、森林所有者には施業収益金、森林組合には施業費、(株)トビムシには販売支援報酬を歳出し、森林所有者から山林管理を委託し、森林組合に施業管理を委託し、(株)トビムシから素材販売金を歳入している。
現在の経済効果は約8億円との事であり、創生交付金を活用して20億円を目指すとの事であった。
百年の森森林事業は、私有林の約3,000haを管理する事が目標である。その手法は、集約化による整備、長期施業管理に関する契約、百年の森林総合情報システムネットワークの構築などである。
間伐材の販売材積などは、平成26年度販売材積2,300㎥、収益支払者数49人、平成27年度販売材積5,437㎥、収益支払者数95人、と大きく伸ばしているが、その要因はC材を増やしたからとの事であった。
平成26年度の平均販売単価は9,800円/㎥、所有者分配金は3,300円/㎥。
一般会計から特別会計への繰出し金は3,000万円であり、言い換えれば税金を森林所有者に分配金として、還元していると言える。
他にも、森の学校事業によって、森について楽しみながら学び考える場づくりを通じて、内外に情報を発信し、西粟倉村に関わる人々のネットワークづくりを目指している。
《邑南町》
邑南町は、攻めの「A級グルメ(5年間)」と守りの「日本一の子育て村構想(10年間)」を二つの柱としてまちづくりを行っている。
先ず、A級グルメの取組みであるが、その萌芽は平成23年3月に策定した「邑南町農林商工等連携ビジョン」にある。そこでは、基本理念として「『A級グルメ立町』の実現を核とした地域振興の推進」が掲げられていた。
農林商工等連携ビジョンの数値目標は、①食と農に関する5名の起業家、②定住人口200名、③観光入込客数100万人であり、実績は平成27年度で①43名、②240人、③92万人と5年間でほぼ達成という驚く結果となっている。
A級グルメとは、邑南町で生産される良質な農林産物を素材とするここでしか味わえない食や体験の事。
A級グルメによる町づくりの目的は、邑南町のイメージを発信し、交流人口の増加と滞在時間の増加から、地域経済の活性化と販路拡大、産業の振興、雇用創出と起業家の育成により、定住促進を行い、邑南町の活性化をする事である。
農林商工連携の取組みの代表例として「素材香房ajikura」があるが、その客単価は1,333円(3,200万円÷24,000人)との事であった。
Ajikuraの取組みでの特色として、地域おこし協力隊の活用がある。邑南町ではA級グルメ立町の実現に向けて、野菜等の栽培から、地元食材を使った料理の提供までをプロデュースする「耕すシェフ」として活動する協力隊員の企業・就農を目指されていた。現在の協力隊員の数は合計30名。
その他として、まち・ひと・しごと地区別戦略を設け、小学校区の12公民館単位でそれぞれに職員を配置(正規1臨時2)し、それぞれの地域が人口増を目指す計画をつくり実践されている点は他にない点であった。
日本一の子育て村構想の成果であるが、合計特殊出生率2.46、社会増減が3年連続で増加という素晴らしい結果となっている。
子育て支援策の目玉施策は、中学校卒業まで医療費無料と保育料第二子目以降無料+24時間救急受付とドクターヘリによる救急対応の安心な医療体制である。他にも病児保育、学校図書室の充実、県立矢上高校への支援、医療福祉従事者確保奨学金、農林業後継者育成基金、奨学金貸与、新規就農支援、農業法人の設立などである。
その評価としては、「経済的な負担軽減の制度は充分」、次は「子育て村構想が掲げる理念である『地域で子育て』を実践し、日本一の子育て村を住民が実感できる町にする」との事であった。
その方策としては、子どもの誕生祝(防災無線でお知らせ)、保育所でのご飯作り体験や手伝い、子育て支援ポイント付与、地域学校などである。
4. 感想
【西粟倉村】
西粟倉村の素晴らしい点は、まちづくりの主柱を持っているという事である。多くの自治体は何によってまちづくりを行うかが明確に示せていないだけにとどまらず、実行出来ていないから、結果や成果が出ていないという悪循環の中で、本来は将来の住民が享受すべき利益を逸失している。
しかし、西粟倉村は、百年の森林構想の元、着実に成果や結果へとコミットしている。実際には行政矛盾がない訳ではないが、現在の一般財源の負担は将来の投資であるとも言えるのではないだろうか。
翻って、朝来市は将来と現在の目的がない。それは手段が目的化している事に起因する。つまり、人口政策という本来は手段であるべきものが目的化しているから、何のために行政を行っているのか、住民の幸福とは何か、何をまちづくりの主柱にすべきか、それらの最重要な目的の検討や構築が蔑ろにされてしまっている。その事は強く感じた。また職員数は40名程度(10名程度は保育士などで、農林水産は7名程度)で20億円の経済効果を創出しようとしている事実は、職員数の減少が業務成果の言い訳には出来ないと感じる視察となった。
【邑南町】
邑南町の成功もまちづくりの方向性をしっかりと据えている事にある。それも早々と。そしてその実現のために目標値を設定し、結果を出されていた。ここでも目的が目的である事の必要性を強く感じ、渋沢栄一の言葉を思い出した。
『夢なき者は理想なし、理想なき者は信念なし、信念なき者は計画なし、計画なき者は実行なし、実行なき者は成果なし、成果なき者は幸福なし、ゆえに幸福を求むる者は夢なかるべからず。』。
今の朝来市の夢は何だろうか...。朝来市に夢がなければ朝来市民に幸福もないのである。その不幸を考える時、議員としての責任を痛感するとともに、その原因である市の在り様と、市の総合計画の無意味さを嘆かざるを得ない。今後は、これまで以上に、市としてのあるべき姿の提案と、現在の総合計画の見直しを強く求めていきたいと思う。
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会派・仁志会 管外視察報告書
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