平成29年2月9日~10日に管外視察を行いましたので、下記に報告します。
1. 視察日時・視察先
① 平成29年2月9日(木)午後1時30分~午後3時30分頃
日南市役所
「テナントミックスサポート事業について」
② 平成29年2月10日(金)午前9時00分~午前11時00分頃
宮崎市役所
「歳入確保対策本部の取組みについて」
2. 各市の概要
《日南市》
日南市は、宮崎県の南部に位置し、行政面積は536.11㎢。人口は53,452人(平成28年4月1日現在)で、平成28年度当初予算は271億9千万円。議員定数は22名(欠員2名)。
《宮崎市》
宮崎市は、宮崎県の南東部に位置し、行政面積は643.67㎢。人口は213,007人(平成27年10月1日現在)で、平成28年度当初予算は3,166億300万円。議員定数は40名(欠員1名)。
3. 視察内容
《日南市》
日南市の油津商店街の再生(テナントミックスサポート事業)は、一人のテナントミックスサポートマネージャーを採用したところから始まる。その募集には333名が応募し、木藤亮太さんが200名以上の市民のセレクションによって採用された。その決め手は焼酎の注ぎ方を冗談っぽく言っておられた。同様にマーケティング専門官も採用された。
採用条件は、①4年間で20店舗、②タウンマネジメント、③サポート・協働体制、④新規事業の提案・実施、⑤指導・支援であり、対価はオールインクルーシヴの月額90万円×12ヶ月の委託事業となっている。
当初の空き店舗率は約23%であったが、実際には約60~70%との事であった。先ず取り掛かったのは、地域を知るために各店舗等に聞き取りを行われ、毎朝の「朝ミーティング」と毎月の「全体ミーティング」、そして適宜の「コミュニケーション」を通して、浸透させていかれたようである。
店舗の再生は、「ABURATSU COFFEE」から始まった。当初は赤字続きであったが、その後に黒字へと転換をしているが、その要因は、「二年間で人(従業員)が成長した」事によると嬉しそうに話されていた。事業の主体は、木藤さんを含めた会社役員と42名の市民出資を受けた株式会社油津応援団である。
これまでの店舗実績は22店舗。出店者は日南に縁のある方。
商店街改修事業の財源は、経済産業省の商店街まちづくり交付金1億4千万円で、その内訳は9,000万円が国庫補助、市が3,000万円、株式会社が2,000万円。
イベントの効果としては、従来の効果とされてきた集客や経済効果ではなく、「空気を変える、つながりをつくる、事業への共感を生む」との事であった。
イベントの反応としては、①地元高校生、②県内学生(卒論テーマ)、③在京日南出身者であったとの事であった。
木藤さんの仰った言葉に、「住まわせる」、「誘致企業によって消費人口を増やす」、「強い意志を持ち、市民が応援したくなり、未来につながる店舗」といったものがあった。
《宮崎市》
宮崎市の歳入(収入)対策本部の取組みについて、市税等の滞納を整理し財源確保を図る事を目的に、平成16年12月に所管課を財政課に置き、宮崎市歳入確保対策本部を設置された。その後に、平成20年の機構改革において、特別滞納整理課の新設によって事務移管を行い、平成23年度からは収入対策本部に移行された。
現在の対策本部で取り扱う歳入項目は、8部局16課が所する36項目で、主なものは、市税、国民健康保険税、介護保険料、保育料、住宅使用料、水道料金等がある。
対策本部会議は年三回開催し、5月に収納対策本部の運営方針の確認、7月に前年度の実績報告及び当該年度の目標収納率の決定、3月には翌年度の収納対策基本方針の決定及び本部の年度事業報告や情報交換等を行っておられる。
各担当課においては、年度ごとに定める収納対策基本方針に沿って、文書や電話、訪問による催告や徴収、差押えの強化、納付の啓発活動、先進地調査、担当者の会議、研修などに取り組むとともに、本部会で定める目標収納率の達成に向け、年間の実施計画を作成するなど収納確保に努めているとの事であった。
平成20年度からは、私債権等の管理の一層の適正化を図るため、債権管理条例を制定されている。
また、各課の収納対策の充実のため、各課で抱えている困難事例への対応として特別滞納整理係への事務の引き継ぎに関する説明会、公課・私債権徴収の対応検討のための担当ヒアリング、(年2回)、収納対策専門員による研修(年2回)の実施、平成28年度からは、公課困難事例との合同捜索等を実施されている。
他に、滞納者に対する行政サービスの利用制限、生活再建型滞納整理(多重債務者対応)等も実施されている。
モットーは、「明るく、楽しく、滞納整理」。現収納率は99.07%で、中核都市としては24位。
公課の滞納整理フローは、督促状⇒一時催告書⇒特別催告書⇒差押え予告書(赤色)⇒給与照会となっている。私債権その他は市債権等管理マニュアルでの対応。
国税経験者を嘱託職員で任用されている。
徴収は現課と一緒に対応。滞納整理は集金に重きを置かず、文書での催告や資産有無の証明など、預貯金での回収がメインである。またインターネットを活用した差押え品の公売も積極的に行っておられる。差し押さえはとにかく何でも差し押さえる、売れそうな物は全てを持ち帰るとの事であった。
また現年の滞納整理に力を入れておられ、その効果が過年度にも及んでいる。その判断は、滞納額ではなく収納率によっている。
宮崎市では、滞納者の意識を変えるよう努力をされている。また、財産捜索に行って、逆に滞納者から感謝をされる事例もあり、滞納整理の現場の士気があげる事例もあるとの事であった。
また、現年の分割納付を認める事は滞納を認める事になるので問題があり、収納自体を困難にする事から、認めていないとの事であった。しかし、国民健康保険税については、例外的に認める場合があるとの事であった。
また、朝来市での直ぐに効果がありそうな滞納整理について質問したところ、給与照会が良いとの事であった。その理由は、給与照会によって事業者から雇用者(滞納者)への指導や立替払いがある場合もあるからとの事であった。
4. 感想
《吉田俊平》
【日南市】
日南市から学ぶべきは、明確な方向性の提示である。そのための手段がテナントミックスサポート事業である。この成功は、木藤さんの手腕によるところが大きいと考えるが、商店街の再生を掲げなければそもそもこの成功は存在しなかったのである。そして目標の明確化(数値化)が方向性の提示とともに行われている事も大いに学ばなければならない。
翻って朝来市に置き換えた場合、あさご元気産業創生センターの設立に際し、明確な方向性が示せていただろうか。また目標の明確化(数値化)がなされているだろうか。現在の状況は必然の帰結と言えるのではないだろうか。
これらの事から、朝来市行政の全てを振り返り、結果重視の行政となるように再考しなければいけないと改めて感じる視察となった。
【宮崎市】
宮崎市の滞納整理で感じた事や学んだ事は、先ず職員の方が滞納整理という普通は嫌がる仕事を前向きに且つ信念を持って取り組まれている姿に感銘を受けた。職員の方は、滞納整理を通じて市民(滞納者)の生活を本気で再建されようとしているのだとも感じた。その事が説明をされている言葉や表情に滲み出ていた。
また、分割納付を積極的に進めている朝来市の滞納整理については今回の視察から再考すべきと考えるに至った。確かに、現年度の分割納付は滞納の認める事に繋がるし、過年度の分割納付は滞納整理を困難にしているだけであるとも言える。
今後に、公正な公平な滞納整理を目指し、「正直者が馬鹿を見る、支払わない者が得をする」、そんな不正義な事が罷り通らないように、また議員として提案すべきは提案し指摘すべきは指摘して、実績も伴う滞納整理を目指して行きたいと思う。