1.視察日時・視察先
① 平成29年7月4日(火)午前9時00分~午前11時00分頃
対馬市役所
「島おこし協働隊の現状等とその後の取組み等について」
② 平成29年7月5日(水)午前9時00分~午前11時00分頃
壱岐市役所
「友好都市提携締結の経緯と交流の現状について」
2.各市の概要
《対馬市》
対馬市は、九州の最北端に位置し、行政面積は708.65㎢。人口は31,545人(平成29年5月31日現在)で、平成29年度当初予算は309億6,700万円。議員定数は19名。
《壱岐市》
壱岐市は、長崎県の北部に位置し、行政面積は139.42㎢。人口は27,367人(平成29年5月31日現在)で、平成28年度当初予算は225億2,300万円。議員定数は16名(欠員1名)。通年議会。
3.視察内容
《対馬市》
対馬市は、世帯数の減少は少なく高齢化率は34.6%で、核家族化・高齢化が進んでいる。産業としては、第三次産業の就業率が高く、66.9%となっており、商業年間販売額は414億2,400万円で、1商店当たり9,330万円と高額なのが特徴である。
また、島内学校卒業者の91.8%が島外に流出している。
そうした中で、地域おこし協力隊制度を活用した島おこし協働隊による地域力の強化を目指されている。当初は、協働隊員の定住化を目指していた訳ではないとの事であった。協働隊のミッションは市が示しているとの事である。
第1期協働隊5名(応募30名)で、生物多様性担当1名、デザイン担当2名、レザークラフト1名、薬草担当1名。第2期協協働隊3名で、生物多様性担当1名、有害鳥獣対策担当1名、民間伝承担当1名。第3期協働隊3名で、島の食材担当1名、島の森再生担当1名、島のタウンマネージャー1名。第4期協働隊5名で、域学連携教育コーディネーター1名、つしまミュージアムプロモーター2名、対馬農協・島のもん魅力発信デザイナー1名、島の循環型農法推進プランナー1名。第5期協働隊2名で、生物多様性担当1名、教育コーディネーター1名。第6期協働隊3名で、エコツーリズムプランナー1名、教育コーディネーター1名、学生研究員1名。
協働隊員の任期満了後であるが、対馬市に定住した方が現在8名との事である。その内訳は、一般社団法人MIT設立2名、NPO法人對馬次世代協議会設立2名、一般社団法人daidai設立1名、地元男性と結婚・自然農法推進1名、起業に向けて準備中2名。
一般社団法人MITについて、MITは“みつける、いかす、つなぐ”の略である。MITは第1次協働隊員と国土交通省離島振興課職員との出会いと発展がめぐり合わせのきっかけとなっている。
現在の予算額は2,300万円。メンバーは7名、業務委託2名、顧問2名。2017年事業は、域学連携コーディネート事業。環境省委託事業(ツシマヤマネコ保全)、佐護ヤマネコ稲作研究会事務局、大型鳥類保護事業(サントリー)、通販事業(ヤマネコ米、グッズ)、新商品開発、各種パンフレット・チラシ作製業務、移住サポート事業、アドバイザー派遣、講演・研修・視察対応である。
[主な実績]
1.対馬市への政策提言
第2次総合計画策定支援
2.交流人口の拡大
3.民泊推進事業
4.移住政策に貢献
5.対馬の知名度の向上
6.対馬の魅力発見・発信
7.物販事業(ツシマヤマネコ米等)
8.地域なりわいづくり支援
ヤマネコ米の取扱量は、年間13t。1個につき100円の手数料(20万円)を収入しており、受託費は60万円との事であった。
《島おこし実践型域学連携教育プログラム》
豊かな地域資源を持続可能な形で利用し、地域と多様な生き方や価値観を育む社会の実現を目指し、島全体を学びの舞台ととらえ地域と大学が触発しながら活動を展開している。具体的活動としては、
① 持続可能な産業づくりの実践
行政、大学・学生、地域の三者が主体となり実践型プロジェクトを実施。
② 地域づくりを担う人財の育成
地元の小中高生や若者を対象として、大学を軸とした多主体連携による地域教育を進め、学びあい、地域づくりを担う人財の育成を図る。
③ 多様な研究のフィールドキャンパス
日本の縮図である対馬をモデルとして、自然現象、社会現象等の真理を追究できる舞台を整え、あらゆる大学に実践のフィールドを提供。
域学連携事業については、受託費800万円で、平成25年度の学生受入数約50名(延べ881名)、平成26年度約30大学450名(延べ1600名)、平成27年度約65大学660名(延べ2500名)以上。
周知については、対馬にゆかりのある人を実行委員とし、一本釣りで各大学にチラシで周知している。募集は、市が募集している。
西日本で他に類のないフィールド研究型のプログラムを提供し、予算額130万円。
《壱岐市》
壱岐市と朝来市の交流の契機は、1738年に百姓一揆の義人として、小山弥兵衛が壱岐に流されたとの歴史からである。島での小山弥兵衛は子ども達に読み書きを教えていたとされている。
1958年に小山弥兵衛の墓が発見され、1970年から平尾明丈氏が現在まで手厚く供養されている。
1984年に和田山町立東河小学校校長ほかが来島した。
1987年に和田山町長から、芦辺町長に感謝のメッセージが贈られる。
1994年に「町おこしワイワイ塾第2期生」が来島し、墓参りを行う。
2003年に但馬食文化まつりに芦辺町物産店を出店、芦辺町産業まつりに和田山特産物を出店。
2007年に朝来市東河小学校と壱岐市箱埼小学校が交流を始める。
2014年2月28日に朝来市・壱岐市「歴史・教育・経済パートナーシップ宣言」を調印。
2015年6月27日に朝来市・壱岐市友好都市提携。
壱岐市産業まつりへの朝来市の出店は、岩津ねぎや黒豆等との事であった。
成果
【対馬市】
対馬市の取組みで注目すべきは、「対馬発 島おこし実践型 域学連携教育プログラム」である。新しい価値を創造するフィールドキャンパス対馬学舎として、持続可能な産業づくりの実践と多様な研究分野のフィールドキャンパスと地域づくりを担う人財の育成を目指されているところである。
それらのプログラムは、職業体験型(短期インターン等)、フィールド研究型(卒論等)、プログラム参加型(島おこし実践塾等)、プロジェクト推進型(中長期インターン等)と別れている。
その視点の素晴らしいところは、対馬市にはない大学との交流を目指されている点である。これらのプログラムの経験者が島おこし協働隊員や移住・定住に繋がっている点で、単なる机上の空論でもない。それは、対馬というツシマヤマネコを有した独自の生態系と通常は離島という不利な条件を逆手にとって有利に変えている事が起因していると思われる。
平成27年度に約65大学660名(延べ2500名)以上が来島しているだけでも、直接効果と間接効果は計り知れない好影響を与えている。そしてその効果は、現在と未来を繋ぐものになるはずである。来島は学生の自主的な意思であり、単に強制的に大学連携を行う他の自治体と違う。この事が心象を向上させているのである。
そして、そうした学生が新たな移住者や定住者になっていく。朝来市においても、大学連携や学部連携などの強制的な交流から、自主的自発的な大学連携を目指していくべきである。そうでなければ、大学連携は単なる通過点として利用される結果に終わるだろう。
【壱岐市】
先ず、小山弥兵衛のお墓を45年間守って頂いている平尾氏には感謝の念しかない。また、今日までの交流を支えた方たちにも感謝をすべきであると思う。
その上で、朝来市と壱岐市の交流を考えた場合、外形上は両市の交流になっているが、その内実は一部の交流に留まっているのが実情である。この事は、壱岐市職員との意見交換の時に指摘したが、その際に「両市の実行委員会からも交流を深めるように」との指摘があったとの事であった。今後に、真の朝来市と壱岐市、市民と市民との交流を図って行く上では、交流を一部に留めるのではなく広く公募をして広い交流を図れるような仕組みが必要である。その一つのアイデアとしては、私は島留学があるのではないかと考える。また、今後は広く交流のメンバーを募る必要もある。
また、ふるさと納税等の取組みや両市職員の交流など、両市で交流のアイデアを話し合い機会等の創出も必要であろうと思う。そうした取り組みが進んだ場合、朝来市と壱岐市にとって、双方がウインウインのパートナーとして確立する。1日も早くそうした関係を築いていけるように尽力をしたいと思う。
また、両市の災害協定が友好都市提携に包括されているのかという質疑には、回答が得られなかった。今後は、災害協定のカウンターパートナーとしての両市の在り方を実現できるように提案を行っていきたいと思う。